暑さ指数(WBGT)とは?どうやって決まる?熱中症警戒アラートとの関係とは

私たちが日々の暮らしの中で感じる「暑さ」は、気温だけでなく、湿度や日差し、風の有無など、さまざまな要素が絡み合って生まれるものです。

夏になるとよく耳にする「暑さ指数(WBGT)」という言葉も、こうした要素をもとにした指標のひとつで、特に熱中症のリスクを判断する際に重要な目安として注目されています。

「暑さ指数」と聞くと、一見すると難しそうに思えるかもしれませんが、私たちが屋外で活動する際の安全性を左右する非常に重要な情報であり、特に高齢者や子ども、持病のある方にとっては命に関わるケースも少なくありません。

暑さ指数(WBGT)とは、気温とは異なる新しい尺度で、身体にとってどれだけ暑さが厳しいかを示す指標です。

正式には「Wet Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)」の略称で、「気温」「湿度」「日射・輻射熱(ふくしゃねつ)」という3つの要素から総合的に導き出されます。

つまり、単に「今日は30度だから暑い」というだけでなく、「湿度が高くて汗が蒸発しにくい」「日陰にいても照り返しが強い」などといった環境の違いを反映できるのが、暑さ指数の大きな特長です。

暑さ指数を構成する3つの要素のうち、最も大きな影響を及ぼすのが湿度です。

人間は、汗をかいてその汗が蒸発することで体温を下げようとします。

しかし、空気中の水分量が多ければ多いほど、汗は蒸発しづらくなり、結果として体内に熱がこもってしまうのです。

次に重要なのが日射や地面からの照り返しによる輻射熱で、例えばアスファルトの上では体感温度がぐんと上がります。

最後に気温ももちろん無視できませんが、実は暑さ指数ではこの3つのうちで比重が一番小さくなっています。

実際に暑さ指数はどうやって決まるのでしょうか。

屋外での観測には「黒球温度計」と呼ばれる特殊な機器が使われ、日射や熱の反射を含む気温の総合的な測定が行われます。

近年では気象庁や環境省がリアルタイムでのWBGTの情報をインターネットで提供しており、誰でも無料で確認することができます。

気温がそれほど高くない日でも、湿度が高かったり、風が弱かったりするとWBGT値は急上昇するため、「今日は涼しいから安心」と油断してしまうのは非常に危険です。

では、具体的にどのくらいの暑さ指数になると危険なのでしょうか。

環境省や日本スポーツ協会では、暑さ指数を5段階に分類して警戒レベルを設けています。

たとえば、WBGTが28以上で「厳重警戒」、31以上になると「危険」とされており、このレベルになると健康な成人であっても熱中症のリスクが高まるとされています。

特に「危険」レベルに達した日は、高齢者の外出は控えるように呼びかけられ、屋外での運動や作業は原則中止が推奨されます。

たとえば、ある真夏日で気温は32度、湿度が80%、ほとんど風がないという状況だったとしましょう。

このときのWBGT値は軽く31を超え、「危険」レベルに達します。

このような環境下で30分間ランニングした場合、身体は汗をかき続けるものの蒸発が追いつかず、熱が体内に蓄積されていきます。

するとめまいや頭痛、吐き気、さらには意識障害といった熱中症の症状が急激に進行する恐れがあるのです。

こうしたケースは実際に学校の部活動や工事現場などでも報告されており、適切な対策がとられなければ命に関わる重大な事故につながります。

また、2020年からは環境省と気象庁が共同で運用している「熱中症警戒アラート」という仕組みが導入されました。

これは、暑さ指数が翌日に「33以上」になると予測された場合に発表されるもので、つまり危険を超えて、極めて重大な健康リスクがあると判断されたときに通知される情報です。

従来の「注意喚起」だけでは熱中症による救急搬送や死亡事故を防ぎきれないという現実を受け、国を挙げての新しい予防体制として整備された背景があります。

このアラートが発令されると、ニュースや自治体の防災無線、スマートフォンの通知などを通じて広く周知されます。

一般家庭においても、この通知を合図に冷房を早めに稼働させたり、外出を控えたり、水分や塩分を積極的に摂取したりする行動が推奨されます。

特に高齢者施設や学校、幼稚園などでは、活動時間の短縮や中止、室内活動への切り替えなどの判断が重要です。

企業でも、猛暑日の工事現場では屋外作業のシフト変更や水分補給タイミングの見直しなどがなされ、暑さ指数を日常の業務に反映する取り組みが進んでいます。

暑さ指数が高くなりやすい場所には、いくつかの明確な共通点があります。

まず挙げられるのは日差しが強く、風通しの悪い環境です。

たとえば、コンクリートやアスファルトに囲まれた都会の道路や校庭、運動場などは、日中に受けた熱が地面に蓄積されやすく、夕方になってもなかなか温度が下がりません。

こうした場所では、体感温度は実際の気温よりもはるかに高くなり、WBGTの値も自然と上昇していきます。

さらに、風が弱く湿度の高い場所では、汗が蒸発しにくいため、熱中症リスクがより深刻になります。

これは、風が通りにくい住宅密集地の狭い路地や、車が多く通る交通量の多い道路沿いなどにも当てはまります。

たとえば、同じ30℃という気温でも、緑の多い公園とアスファルトだらけの駐車場では、WBGTの値が2~3度以上異なることがあります。

これは、植物が持つ蒸散作用(植物が水分を蒸発させて気温を下げる働き)や日陰の多さ、地表面の反射率などが関係しており、まさに暑さ指数が「体感に近い」指標であることを示す好例です。

このような特性を踏まえ、私たちが日常生活の中で暑さ指数を活用するにはどうすればよいのでしょうか。

まず最も基本的な活用方法は、当日のWBGTを事前に確認することです。

気象庁や環境省が提供している「熱中症予防情報サイト」や、民間の天気予報アプリでも、地域ごとのWBGT値をリアルタイムでチェックできます。

予定していた屋外作業や外出、運動をWBGTの数値によって調整するというのは、極めて有効な熱中症対策となります。

たとえば、朝からWBGTがすでに27を超えている場合、学校の体育の授業では屋内の涼しい環境に切り替える判断が求められますし、工場や建築現場では作業時間の短縮や交代制の強化、水分・塩分補給の回数増加など、具体的な対応策をとることができます。

また、個人レベルでも、外出時に必ず飲料を持参する、帽子や日傘を活用する、汗をかいた後はこまめに塩分を摂るなどの行動が、WBGTの高い日においては特に重要です。

とりわけ注意すべきなのが高齢者と子どもです。

高齢者は体温調節機能が低下しており、暑さを自覚しにくいため、気づかないうちに熱中症を発症することがあります。

特に室内でも油断は禁物です。

冷房をつけずに過ごす習慣のある高齢者も多いため、室内WBGTが28度を超えた段階で冷房の使用を促すなど、周囲の人の声かけや見守りが非常に大切になります。

近年では家庭用のWBGT計も市販されており、室内の危険度を視覚的に確認する手段として活用されています。

子どもに関しても、体温調節機能が未発達であり、さらに身長が低いため、地面からの照り返しの影響を大人よりも大きく受けるという特徴があります。

とくにベビーカーに乗っている乳児は、地表からの熱に加えて風通しの悪さも重なり、WBGTが高くなりやすいのです。

公園で遊ばせる場合でも、WBGTが28度を超える日は遊ぶ時間を短くしたり、木陰の多い場所を選んだりする工夫が必要です。

また、WBGTのリスクには地域差も存在します。

一般的に、関東・関西・九州などの大都市圏ではヒートアイランド現象の影響により、夜間でも気温が下がりにくく、暑さ指数が高止まりする傾向があります。

一方、同じ日本国内でも、北海道や東北地方の一部では、気温は上がっていても湿度が低く、WBGTがそれほど高くならないケースもあります。

しかしながら、こうした地域では逆に暑さに身体が慣れておらず、「暑熱順化」が進んでいないことによる熱中症リスクがあるため、数値に現れない危険性にも目を配る必要があります。

ときに「WBGTが31度を超えたら運動は禁止」といった基準だけが一人歩きしがちですが、実際には個人の体調、生活環境、暑さへの慣れの度合い、日陰や風の有無などを含めた総合判断が求められます。

同じ暑さ指数でも、湿度が低く風のある日は意外と快適に感じられる一方、風のない蒸し暑い日はわずかな運動でも危険になることがあります。

このように、「暑さ指数」は単なる数値の羅列ではなく、私たちの行動や命を守るためのシグナルとして位置づけられているのです。

暑さ指数(WBGT)の重要性が社会的に広く認識されるようになった背景には、熱中症による救急搬送者数の急増という深刻な問題があります。

総務省消防庁の統計によると、夏季の3か月間だけで毎年数万人が熱中症で救急搬送されており、そのうち高齢者や小児の割合が高いことがわかっています。

特に、WBGTが28度を超える日が連続するような期間には、搬送件数が跳ね上がる傾向が顕著で、これは単なる偶然ではなく、WBGTの信頼性と実用性を裏付ける統計的な証左でもあります。

こうした状況を受け、企業や自治体の間でも暑さ指数を活用した具体的な取り組みが進んでいます。

たとえば、建設業や運送業などの屋外労働が避けられない職場では、WBGTを測定して作業可否の判断材料とする運用が定着しつつあります。

ある建設会社では、WBGTが31度を超えた時点で作業中断や水分補給休憩を義務化しており、実際に熱中症による事故が大幅に減少したという報告もあります。

また、自治体によってはWBGTに連動して学校や福祉施設へ情報を自動通知するシステムを構築し、外遊びや外出の可否判断に役立てています。

近年、学校教育現場でも暑さ指数の活用が進んでおり、特に部活動や体育の授業においてはWBGTに基づく中止・延期の判断がルール化されています。

例えば東京都では、学校ごとにWBGTモニターを設置してリアルタイムにチェックできるようになっており、WBGTが28度以上で屋外活動を控える指針が明示されています。

このように、客観的な数値に基づいて安全性を評価する仕組みが浸透しつつあることは、教育や福祉の分野にとって大きな前進と言えるでしょう。

また、気候変動との関連も見逃せません。

地球温暖化により、夏の最高気温の上昇だけでなく、湿度の上昇や夜間の気温の高止まりといった現象が加速しています。

その結果、WBGTが高くなる日が年々増加しており、かつては年間数日だった「危険レベル」のWBGTが、今では7月から9月の間に何十日も出現するという地域も珍しくありません。

こうした状況は、今後さらに頻発・長期化すると予測されており、暑さ指数に基づいた熱中症対策の重要性は年々高まっていくと考えられます。

このような中で、私たち一人ひとりができる対策も数多く存在します。

まず基本となるのは、毎朝WBGTを確認し、その日の行動を見直す習慣をつけることです。

これは天気予報を確認するのと同じ感覚で構いません。

さらに、自宅にWBGT計を設置する、またはスマホアプリでアラートを受け取るといった形で、暑さに「気づける」仕組みを自分で整えることも大切です。

日中外出する際は、帽子・日傘・通気性の高い衣服・冷感グッズなどを活用し、こまめな水分・塩分補給を意識します。

室内ではエアコンを我慢せず適切に使うことが重要です。

特に高齢者世帯では「もったいないから」と冷房を避ける傾向もありますが、命を守るためには必要な消費だという意識が必要です。

また、家族や近所の高齢者に対して、声をかける・室温を確認する・一緒にWBGTを見るといった支援の輪を広げることも、地域全体の安全性を高めることにつながります。

そして、子どもたちに対しても、「今日は危険だから無理しないこと」「暑さ指数が高いときは遊び方を工夫すること」などを丁寧に教えていくことが重要です。

暑さに対する教育は、今や防災教育と並んで必要な生活知識の一部です。

これからの時代、WBGTは単なる「数字」ではなく、日常を安全に生き抜くための生活指針となるべきものです。

最後に、暑さ指数が「見えない危険」を可視化することで、私たちの命を守ってくれる存在であることを改めて強調したいと思います。

気温が下がる夕方になっても、WBGTが高いままであれば熱中症の危険は続きますし、逆に気温が高くても湿度や風の条件次第で比較的安全な場合もあります。

つまり、正しく知ることで、正しく行動できる

それが暑さ指数の最大の価値なのです。

気象災害としての「暑さ」は、今後ますます深刻化していくと予想されます。

ですが、WBGTという指標を上手に活用することで、私たちは冷静かつ柔軟に対応することができます。

数字の背後にある環境の変化を読み取り、自分自身や大切な人たちの健康を守る力に変えていく──これこそが、暑さ指数が社会に果たすべき役割であり、私たち一人ひとりにできる備えなのです。

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